SEPTEMBER - OCTOBER 2006 仕入れ日記

どこまでも果てしなく続くー 
ストックホルムまではおよそ800キロ・・・ 飛行機に乗ればあっという間だけれど、でもやっぱりFWに乗ってしまう。
ヨーロッパ大陸のほとんどの国はFWで繋がっている。途中、小さな田舎町へ寄り道していくと思いがけない出会いがある。そう考えるだけでなんだかワクワクしてしまうのだ。


 

再会ー
ストックホルムでは4泊のうち2泊は友人(ラース、エリン、ヴァンヤちゃん)のお宅で泊めてもらうことになっていた。待ち合わせはエリンのお母さんであるカリンが勤めているコンストファック美術工芸大学(かなりの難関校らしい)で。そこには久しぶりに会うカリンとわざわざ仕事を休んで来てくれたラースの姿が。。以前、カリンが「大学を案内してあげるわよ」と言っていたことをずーっと信じていた僕は今回こそはと、ようやく実現したのだ。(ちなみに、S・リンドベリもこの大学の卒業生である)

コンストファック大学には、ファニチャーデザイン、アーキテクト、ビジュアル、テキスタイル… などのさまざまな専門学科がある。その中でも一番興味があり、カリンが教授として教えているアーキテクト&ファニチャーデザイン科を案内してもらった。もとはエリクソン社(携帯電話で有名な)ファクトリーの建物ということもあり、外観からは学校という雰囲気はまったくない。。入り口の大きな扉はとても重厚なものでシンプルかつ自動。入るとまず目に飛び込んできたのは、広々とした白と赤で統一された食堂と生徒達の作品が展示されているギャラリースペースがある。
通路には生徒達が輪になって座り何やら雑談?と思いきや授業を受けているのだ・・・ 何とも自由なスタイルで楽しそうだ。とにかく自然光がたっぷり入るとても気持ちの良い校舎で、こんなところで勉強できるものならしてみたい、と思った。

写真上段左より■エリクソン社の看板を残した校舎 ■階段の片隅には作品でもある自転車が。どれだけ走れるかという大会のために作られたものだそう。結果が気になるところ。■自然光が美しくさしこむライブラリー。壁には様々な種類の素材サンプルが。入り口近くではちょうど日本のプチデザイン展が行われていて、美術館などのリーフレットやDMが展示されていた。もちろん金沢21世紀美術館のものも。/下段左より■家具デザイン科の実習室にて。■壁にはヘッドホンや帽子をかぶるように促しているポスターが。
写真左■ミーティングルームの中は天井までの空間を利用して、サンプルや参考とすべき椅子たちが並ぶ。中には巨匠デザイナーのものも。/右■卒業制作に励む学生。彼が椅子を作っているその向かいでは、女子学生が外灯製作に励んでいた。室内向けの素晴らしい照明は多いけれど、室外の良い照明がない、、というのが照明デザイナーを目指す動機だそう。実習室では皆真剣そのもの。

普段の暮らしー 
ストックホルムでは珍しい十何階?建てのマンションに住んでいるラース一家。 築年数も古そうだが、某建築家の設計したこの建物はモダンさもあり街並みにもすんなりとけ込んだいた。また都心に位置しながらも8階から見る景色は湖や緑も眺められ、どこか別荘地にでも来ているかのような錯覚すらあった。
3DKという間取りで僕たち家族はリビングとヴァンヤちゃんの部屋を使わせてもらうことに。部屋の至る所には、お店で並んでいてもおかしくないモノたちが惜しげもなく使われ、まだまだ現役で活躍している。 そっか、、、ここはスウェーデンなんだ・・・と納得してしまう始末。聞くと、「親から譲り受けたモノを何年も前から使っているよ」と。 
夕食では普段使いのSPISAプレートに盛られたサーモンのムニエルをご馳走になる。ついつい、ワインもすすむ。。 そしてスウェーデンの生活スタイルや建築デザインの話、お互いの仕事、子供のことなどいろんな話をした。会話の中でラースが「なんで日本にもいっぱい良いモノがあるのに北欧なの?」と意表を突いた質問が。今まであまり聞かれたことのない質問に僕はつい「好きだから・・・」と。 
夕食後、布団に入ってもそのことが頭から離れず、ずっと考えていた。
確かに日本にも(もちろん金沢にも)たくさん良いモノがある。でもそれ以上に北欧のモノに衝撃を受けた。理屈では語ることの出来ない何かがあった・・・ 思い起こせば、始まりは「好き」が高じてだったのだろう。もちろん今でも根底には必ず「好き」があって、旅先で出会ったいろんな「好きなモノ」を買い付けている。家具に至ってはほとんどが傷だらけの状態で(それが当たり前)遙々、日本へやってくる。新たに蘇った家具は、また新たな人の手に渡り何十年と使われる。一つひとつの家具が持つ歴史と、これから刻まれる新たな歴史を繋ぐ役割。いつしか自分の仕事に責任と誇りを持っていた・・・

 
写真上段左より■エクビーポットにヒビの入ったアダムのソーサーを受け皿に。 以前、日本に来たとき富士山に登った記念ののれん。「一歩 一歩 また一歩」。 アァルトチェアにブロイヤー を合わせる清潔感のあるダイニングコーナー。/写真下段左より■1歳半のヴァンヤちゃん、ソーイ(息子)と仲良くお絵かき。言葉は通じないが心は・・・。 ■ラース一家と。彼らとは仕事上の付き合いは一切なく純粋に家族ぐるみの友達なのだ。お互い同い年で、好きなモノも似ている。

別れの日ー
ちょうど日曜日ということもあって、みんなでセントラム近くのマーケットに出かけた。ゆっくりと買い物を楽しみながら、レコードを何枚か購入。ラースたちも何やら買ったみたいで小さな袋を持っている。すると「これ、あげるよ」と・・・。 手渡されたのは、ラースたちの部屋にもあった同じ柄のエクビーの鉢。。

この2日間、彼らは普段のありのままの姿で僕たちに接してくれた。
着飾ることもなく特別な振る舞いをするわけでもない。
常に自然体だった。
それが心地よくもあり嬉しかった。

日々の生活を「お洒落に暮らす」ということよりも、まずは「きちんと暮らす」その積み重ねが大事なんだよ。と彼らから教わったような気がした。

彼らと過ごした時間はかけがえのない思い出となり「今度は金沢で会おうね」そう約束し、ストックホルムを後にした。

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